SEKAI NO OWARI『スターライトパレード』歌詞考察

作詞:深瀬慧

作曲:中島真一

 

 この歌では、深瀬は"STARLIGHT PALADE"の世界へ"Welcome"と導き入れる「救世主」と、「もう一度あの世界へ連れて行って」と願う「僕」の2役を1人で演じている。PVでも、白い服を着た「救世主・深瀬」と、赤いパーカーを着た「人間・深瀬」が途中で入れ替わるという演出がなされている。

 この曲は曲調からしてファンタジー全開で始まるが、すぐに「眠れない僕たちはいつも夢のなか」「太陽が沈む頃僕らはまた一人」と寂しい雰囲気になる。聴衆を夢の世界へと誘って置きながら、実は聴衆を「孤独」「挫折」「喪失」から解放してくれない。

 「僕の一つの願い」「星に願うんだ」とは、「あの世界へ連れて行って」という願いだと思う。では「あの世界」とはどんな世界なのか。

 1番の後では、「僕たちを連れて行ったあの世界」「もう一度連れて行ってあの世界へ」と対をなす形で出てくる。前者は過去形であるため、こちらの夢の世界は過去の記憶の中にある。後者は未来形であるから、夢の世界は未来の希望の中にある。つまり、夢の世界は過去と未来のものであって、今は夢の世界ではない。

 「時間が止まったような夜」も「笑ってた君はもうここにはいない」とあることから、「僕」が「眠れない」ほどの喪失感に襲われているのは、「君」がいなくなってしまったからだとわかる。時間が止まったような夜、つまり過去の記憶の中で「君」は笑ってたと表現していることから、「君」のことを「僕」は愛していたのだろう。その「君」がいない世界に「僕」は取り残されている。

 「僕」は"requiem(鎮魂歌)"を歌う。ここで非常に重要なのが、このrequiemが「君」に向けたものではなく、"world requiem"、つまり「君がいなくなった世界」に向けたものであるという点だ。この抽象的思考こそが、バンド「世界の終わり」のコンセプトである。深瀬は、「君」がいなくなったとき、「君のいなくなった世界」の方にフォーカスするのだ。

 「あの世界」とは、「君がいた世界」だ。その世界に「もう一度連れて行って」と願っているのだ。

 最後の"Welcome to the STARLIGHT PALADE"ブロックでは、「僕たちは探していくんだ 夜空の星が射す方へ もう君がいなくなったこの世界で」となる。どんなに願っても、「あの世界」に行くことはできず、「君がいなくなったこの世界」で喪失感に縛られ続けるのである。それでも、僕たちは「あの世界」を探し続けるのだ。

 最後に、「それはまるで僕たちの文明が奪った 夜空の光のように」と締め括られる。「それ」とは「君」のことを指すとすると、「君」は「夜空の光」のようだと言っている。「夜空の光」は、僕たちの文明の進化により、光害が発生し奪われてしまった。文明の進化という止められない流れに流されて「夜空の光」が奪われてしまったというのは、これまた「諸行無常の喪失感」を感じさせられる。

 「この世界」からは、「君」が次々と消えていき、「あの世界」へと行ってしまう。「この世界」にいる僕たちは、どんなに願っても「あの世界」に行くことはできず、喪失感に縛られながら生きていくしかないのだ。

 

※参考文献: 『SEKAI NO OWARIの世界: カリスマバンドの神話空間を探る』(中村圭志 著)